女性起業家3名が直面した壁と、その先にあったもの【She Leads We Rise 起業家パネルレポート前編】

MPower Partners Team

Mar 13, 2026

WPower Fundが開催した「SHE Leads WE Rise」では、機関投資家によるパネルディスカッションに続いて、起業家であるスプツニ子!氏、福田恵里氏、申真衣氏が登壇。前半で発表されたボストン・コンサルティング・グループ(BCG)との共同レポート「スタートアップ調査: 女性起業家を取り巻く課題と解決策」の結果に対する実感や、人脈の作り方、投資家との付き合い方などを語りました。

パネリスト

  • スプツニ子!(アーティスト/株式会社Cradle代表取締役)

  • 福田恵里(SHE株式会社 代表取締役CEO/CCO)

  • 申 真衣(株式会社GENDA 取締役)

モデレーター

関美和(MPower Partners ゼネラル・パートナー)

調達額格差の一因は、女性の起業領域に対する投資家の理解不足

関:BCGのレポートでは、資金調達額上位100社のうち、女性創業スタートアップの調達額は0.3%という、ちょっと悲しい数字があったんですけれども、皆さんの実感はどうでしょうか?

申:私の会社は事業領域がゲームということで、ベンチャーキャピタルからの出資をほとんど受けられなかったんですね。また私自身、調達額をすごく大きくしようとは思っていなかったので、かなり早い段階からデットを活用し、常にギリギリ入るぐらいの資金しか調達しない状態でした。上場までに上達した金額は50億にも届きません。そのため、評価額や調達額におけるジェンダー格差の実感値はあまりないのが正直なところです。

福田:私たちは、1年半前にシリーズCで累計44億円ぐらい調達したのですが、周りを見ても、レポートの結果は現状に合っている印象です。VCが大きな金額を投資している領域は、ディープテック系や製造業、あとSaaSだと思いますが、女性は公共や教育、介護や福利厚生といったドメインで創業するケースが多い。しかし投資家には男性がとても多く、それら領域に対する解像度や理解度が低いと感じます。その結果、スケーラビリティへの感度が肌感覚としてつかめず、企業の価値としてつけづらい部分があるのかなと。そこが構造的に一番大きな点かなと感じています。

関:資金の出し手に拡張性を見る力がないという今の指摘に関して、スプツニ子!さんはいかがですか?

スプ:あまり理解がないパターンは多いですよね。私も今でこそ領域が広がったものの、当初女性の健康を中心にプロダクトを作っていた頃は、理解できる投資家は日本に限らず世界でも少ないといわれていました。ただ、逆にいうとそれだけライバルが少ないのでチャンスになることもあったとは思います。

また、レポートの結果はネットワークやコミュニティ不足も影響しているだろうなと思いました。 私はアーティストなのになぜ突然会社を作ったの? とよく言われるのですが、起業家である共同創業者の女性から「会社作ったらいいじゃないですか、向いてますよ」と背中を押されて作っちゃったんです。でも、そもそも女性で起業している人が少ないなか、友達に飲み会で「起業しちゃいなよ」と言われる機会は多くない。私は大学で数学やコンピューターサイエンスを専攻していて、クラスメートにも起業している人がいたのに、女性起業家のロールモデルが少なすぎて自分ごととして考えたことがなかったんですよね。 

いろんな人のいいところを集めて自分だけのロールモデルを

関:ちょうどロールモデルの話が出ましたが、レポートではロールモデルの多様性が乏しいという分析がありました。いわゆるロールモデルといわれる方って、ステレオタイプなイメージでは超人とか鉄人みたいなイメージがあると思うんですけれども、皆さんはそれに対してどう思いますか?

申:私はもともと起業をしたいと思っていたわけではないんです。私が2007年に社会人になった当時、メディアに出る起業家の姿は自分と重ねることが難しい人物像として見えていました。なので、起業は自分と関係ないことだと思っていた。その後時間の経過とともに、いろんな人が起業をする姿をメディアを通して見ていたものの、8年前に起業したときもロールモデルが明確にいたわけではありません。競争環境や市場環境などいろんな要素を重ね合わせて、自分がこのリスクを取るべきだという観点で意思決定をしました。

しかしあとから振り返ると、ゴールドマンサックスの後輩であるWantedlyの仲暁子さんが成功する前の姿を知っていたのは、すごく大きかったように思います。もともと聡明で行動力のある人ですが、起業前の彼女も知っていたので、その姿を見て自分にも何かできるんじゃないかと思えた。すでに成功した人をいくら見ても、自分に重ね合わせるのはすごく難しいので、昔から知ってる人が起業する例が増えていくと、自信を持ちやすいんじゃないかなと思います。

関:確かに私は、キャシー松井さんも村上由美子さんも昔から知っていますが、まあ今でこそ超人鉄人みたいな感じですけれども、若い頃は普通というか。もちろん優秀ではありましたけれど。福田さんはいかがですか?

福田:女性起業家の共通点として、親族に起業家や経営者がいる場合が多いなと気づいたんです。資金やネットワークに恵まれているという意味ではなく、起業という選択肢が自分の人生に当たり前にあることが影響しているんだと思います。

ロールモデルって、必ずしも「あの人になりたい」という憧れの人じゃなくていいと思います。「自分の周りにいる5人の平均が自分」という言葉がありますが、女性の起業家を増やすのにその5人をどのようにデザインするかが有効なのではないかと思っています。なので、起業したいと少しでも思うのであれば、女性起業家の友達を作りに行くとか、企業経験者が周りにいる環境を作るなどがすごく大事だなと思いますね。

それから、ロールモデルは1人じゃなくていい。今の時代は価値観や生き方も多様です。だから申真衣さんのこの部分、スプツニ子!さんのこの部分、といいところをつまみ食いしながらパッチワークのように自分に合うロールモデル像を作るといいかなと思います。私も実際にそうしています。

スプ:私は同世代の起業家の皆さんの経験を参考にします。私は12月に2人目を出産したのですが、福田さんがつわりの大変さや経験談を語ったインタビューにとても勇気づけられたことをここでお伝えしたいです。15年前ならこんなに情報がなかったと思うので、最近こうした事例が出てきたのはすごくいいなと思います。勇気づけられた人は私以外にも多いと思いますね。

女性起業家が成功する鍵は「控えめ」にならず、諦めないこと

関:レポートでは起業するうえでジェンダーが不利に働いたと回答した女性は38%でした。 一方で、男性はゼロです。ここについて皆さんの実感はどうでしょうか?

もう1つ興味深かったのは、福田さんと申さんを含む 9名の女性起業家にインタビューしたところ、「ジェンダーが不利に働いたかどうか」という質問に対して全員が「ない」と答えたんですよ。これはどういうことなのか、皆さんの意見を聞きたいです。

申:私は会社員時代も含めて、ジェンダーのせいでいやな思いをしたことは結構あります。女性だから責任者と思われず、男性部下と先に名刺を交換をしようとされたり、「どうせやる気ないよね」と見なされたりすることも多々ありました。けれども、一定のレベルを超えると、女性が少ないという理由で急に注目されたり応援されたりすることが増えた。プラスの分が一気に返ってきたことで、足し引きすると結果的にはお釣りが来ているような気もします。ただそれは、その前段階でみんなが感じるいやな思いのうえで受け取っているものだと思います。

関:レポートでも、プラスに働いたという人が19%いましたね。福田さんはいかがですか?

福田:私も申さんと一緒で、プラスとマイナスどちらもありました。26歳で起業したときは、お金もコネも事業もマネジメント経験もない状態だったので、カンファレンスなどで投資家にピッチしても相手にしてもらえないことばかりでした。でもそこから事業で見返すと決めて、トラフィックを1つ1つ積み重ねて、少しずつ話を聞いてもらえるようになって今に至ります。今でも初対面では下に見られていると感じることが多々あるなかで戦っています。

インタビューでは、ジェンダーギャップをあまり感じたことないと答えましたが、明確にこれは不利だなって思ったのは、出産なんですよね。それまでは深夜3時まで働いても大丈夫でしたが、妊娠しながらは無理だったんですよ。それがジェンダーの差を感じた瞬間でした。その物理的な制約以外にも、日本では家事育児負担が女性に偏りがちなのも課題です。

スプ:私は1人目の妊娠中に、先輩ビジネスウーマンの方々にアポを取ってzoomでいろいろ教えてもらうことにしました。なぜなら、日本のメディアでは働く女性が育児や家事の負担を効率化したりアウトソースしたりすることをタブー視しているのか、情報がすごく少なかったんですよね。仕事と家族を両立している先輩の情報を秘密で教えてもらう、みたいな感じでした。

女性ということでいやな思いをしたあとで、レアキャラになってプラスのことが増えるというのは、確かに同感です。でもそこを突破するまではやっぱり大変ですし、構造的な偏りに対して何もしなくていいとは思わない。レアキャラになれてラッキーだったことを自覚しつつ、それは絶対に正していきたいです。

関:そこに行くまでには何が必要なのでしょうか?

申:諦めないことだと思います。起業は当初想定した事業計画どおりに行くことがない。ピボットし続けて、考えを改め続けて、人を入れ替えてでもなんとか続けていかないと、絶対成功はしないと思うんですよね。 

福田:身の丈以上にリスクを取ることが、自分としては大事だったなと思います。前のパネルで出た「控えめ」という気持ちは私もとてもわかるんです。「私にはこれぐらいでちょうどいい」って思いがちなんですよ、 本心では。それをぐっとこらえて「できます」「やります」と言う。コンフォートゾーンを抜け出す機会を自分に与えて、自分をストレッチさせるのをずっと続けていくと、ちょっとずつ世界が広がってきたり、相手にしてくれなかった人が仲間になってくれたりします。そうして自分ができることがすごく増えていった実感があります。

申:控えめになる根底には「好かれたい」という気持ちがある気がします。女性は小さな頃から、好かれるように、みんなの期待に応えられるようにと刷り込まれるから、自信がないふりをした方が敵が少なくなる。でもその「好かれたい」気持ちを打ち破って「嫌われてもいい」と思った方がいいんじゃないかな。 

福田:いい子であるとか、役に立つ自分であるとか、それによって価値を認められてきたから、そういう生き方が日本の女性全体に染みついている。生存戦略ですよね。それを脱ぎ捨てて、自分が成し遂げたいビジョンや大義のためにメタ視点で勇気を持って踏み込むのがすごく大事です。

スプ:私は28歳でマサチューセッツ工科大学の助教になったんですが、MITでは女性の新任教授に女性教授のメンターがつくんです。私のメンターはパティ・メース教授だったのですが、最初のミーティングで、女性は男性と比べて自分の能力を過小評価しやすいというデータを見せてくれました。またコロンビア大学ビジネススクールの調査だと、男性は自分の能力を実際よりも30%高く見積もる傾向があるとか。そのデータを示しながら、過小評価はもったいないんだよと。自分に自信があるとチャレンジしやすいし、チャレンジすると能力が伸びる。だからこれからのキャリアで「できないかも」「無理かも」と思ったら、このデータを思い出しなさいと言われました。このアドバイスがあったから自分の力を広げてこられたし、起業も含めていろいろチャレンジするのに大事な考え方だったなと。今でもたびたび思い出します。

(後編に続く)

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