低得点層拡大に注意を 日本の学力最上級を考える

Yumiko Murakami

Oct 15, 2026

経済協力開発機構(OECD)が非加盟国を含む91カ国・地域の15歳を対象に昨年実施した学習到達度調査(PISA)で、世界的な学力の低下傾向が浮かび上がった。こうした傾向の是正が喫緊の課題となる。

OECD加盟38カ国の平均得点は読解力と数学で過去最低を記録し、15歳の5人に1人が低得点層に該当した。2015年から25年にかけて加盟国の平均は読解力で28点、数学で22点それぞれ下がっている。25年に重点的に調査された科学の平均得点は、前回調査時の22年から横ばいだった。非加盟国を含む全体では15〜25年の間、読解力で16点、数学で8点それぞれ下がっている。

「性急な読み手」

学力低下の要因はいくつか考えられる。特に気になるのはスクリーンタイム(画面付き電子機器の使用時間)の増加である。

じっくり読書を楽しむ生徒が減る一方、交流サイト(SNS)やスマートフォンを通じて短く断片的な情報に触れる時間が増えた。長い文章を集中して読み通す経験自体が減っているのも読解力の低下と関係しているようだ。時間をかけて文章を読まず、誤った回答をする「性急な読み手」とOECDが分類する生徒は、前々回調査時の18年の約7%から25年に11%へ増加した。

教員不足や家庭の経済的事情といった問題に起因する学力差も依然として大きい。

他方、SNSをはじめとしたテクノロジーが学力低下を招く“悪者”と考えるのは間違っていると思う。OECDはテクノロジーや人工知能(AI)を目的を持って使えば、学習の助けとなり得るとしている。学校でデジタル機器を学習目的に適度に使う生徒は比較的高い成績を収めるが、長時間利用や娯楽目的での使用は成績低下と関連している。

問題はテクノロジーを使うか使わないかではなく、何のために、どう使うのかということなのだろう。

インターネットやデジタル技術を使いこなせる人と、そうでない人の間に生じるデジタル格差も気になる。これまでは高性能な機器やネット環境、生成AIにアクセスできるかどうかが格差を生む原因だった。AIが急速に普及する今、それをどう使うかによっても格差が生じるのではないだろうか。

例えば答えをすぐに得るためにAIを使うのと、自分の考えを深めたり、問いを立てたりするために使うのとでは、学習への影響はかなり違う。家庭や学校の環境によってAIの使い方を学ぶ機会に違いがあれば、新たな教育格差につながる恐れがある。

考える力育め

日本の結果を見ると、目につくのはランクの高さである。日本はOECD加盟国の中で読解力、数学、科学の3分野で1位となり、全体でもトップクラスに入った。わが国の教育にとって朗報である。

だが私は別の数字に注目している。平均点を基に段階的に設定した習熟度で、日本は最も低い「レベル1以下」の割合が3分野ともに拡大したからだ。最大は読解力で、前回の13.8%から18.6%に、数学は12.0%から16.1%に、科学は8.0%から11.3%になった。

わが国における教育の強みの1つは、一部の非常に優秀な生徒だけでなく、一定以上の学力を持つ「分厚い中間層」の存在だった。低得点層の割合がOECD平均より低いことも強みを支えてきた。その中間層から脱落する生徒が増えて低得点層の割合が拡大しているとすれば、大きな問題になるかもしれない。

そう考えると日本の課題はトップ層をさらに伸ばすだけではなく、学習につまずいた生徒をどう支えるかにある。AIを使って理解度に応じた指導に取り組むことも、1つの方法だと思う。ただしAIに答えを出してもらうだけでは意味がない。教師が生徒の考える力や読む力を育みながら、必要なところでテクノロジーを使うことが重要となる。

日本の学力が世界のトップクラスにあるという結果を喜んでばかりもいられない。習熟度を巡って何が起きているのかを究明することが、わが国の教育の強さを維持する上で肝要となる。

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