急成長スタートアップ・SHEがESGをスムーズに実践できる理由【SHEインタビュー・前編】
2023.05.29 MPower Partners Team

ミレニアル女性の間で話題のキャリア支援プラットフォーム、「SHELikes(シーライクス)」。スキルのトレーニングからコーチング、仕事の機会まで提供するこのサービスを手掛けているのがSHE株式会社です。

同社は2017年の創業以降、「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」というビジョンのもと事業を順調に成長させ、累計6万人以上の女性のキャリア構築や自己実現を支えてきました。

そんなSHEでは、2022年からMPower Partners FundとともにESGの実践に取り組んでいます。そのプロセスを振り返って「ここまで特に大きな反発はない」と話すのは、創業者で代表取締役CEO・CCOの福田恵里氏です。

急拡大中のスタートアップでありながら、なぜESGをスムーズに実践できるのでしょうか。SHEのESGジャーニーの中身を見ながら、その理由を探ってみましょう。

価値観をベースに制度や環境を整えた結果、Sの施策が自然と充実

SHEにとって、ESGのなかでも事業に直結するのがS(社会)の領域です。

そもそも同社は従業員の7~8割が女性。事業を通して女性の社会進出やリスキリングを牽引する企業として、これまでも率先して多様な働き方を認め、福利厚生を大企業並みに充実させてきました。

その1つが2021年に始まった「Hello! Baby プログラム」です。これは従業員のライフイベントを応援する制度で、つわりや妊活に使える「ケア休」、子どもの行事出席などに使える「キッズサポート休暇」、妊活補助や認可外保育園補助など従業員の「産む」から「育てる」までの全プロセスに伴走することにこだわっています。

その一方で、多様な生き方を尊重する同社としては「産む」従業員だけを尊重した施策にならないよう気を配りました。たとえばケア休は、体調不良であれば誰でも内容を聞かれずに取得できるため、あらゆる従業員に利用されています。

こうした施策を支えている価値観が、「自分の当たり前を押しつけず、どんな状況の人も自分らしい働き方を実現できる」こと。これがあらゆる制度やメッセージに浸透した結果、従業員が働きやすい環境が整っただけでなく、優秀な人材も確保しやすくなりました

2022年にESGのフレームワークを活用し始めてからは、新たな取り組みもスタート。その1つが株主であるポーラオルビスHDとの協力で始まった女性起業家輩出プロジェクト「NEXT FOUNDERS」です。

日本の女性社長比率は8.2%、上場企業では1%以下という現状のなか、「女性社長が増えると、登用される女性管理職が増えるだけでなく、働きやすい環境や制度も整う」と信じる福田氏。目指すのは、女性起業家を年間100人輩出することです。

ESGの理解を土台に、難易度の高いGも不満なく実践

現在SHEには、取締役、経営企画、広報という3つのステークホルダーを中心としたESG推進チームがあり、MPowerとともにマテリアリティの作成を進めています。その取り組みのなかで浮き彫りになったのは、事業内容に直結するS、完全リモートワークであまり意識せずに実践できていたE(環境)に対して、G(ガバナンス)の部分が足りていないという事実でした。

そこでGの部分を強化すべく、創業6年目の下期に取締役会を設置。経営と執行を分離し始めたわけですが、ガバナンスで求められる体制と、スタートアップとしての推進力の両立は一筋縄ではいきません。特に曖昧さを許容しながら迅速にPDCAを回してきたサービス開発の過程などで「スピードを犠牲にする決断が必要な場面もあった」そうです。

ただし、ガバナンスの強化によって社内で不満が出ることはありませんでした。それは、SHEの組織内にESGの意識が浸透していたからだと福田氏は話します。

EでもSでもGでも、ポップアップで施策をやっていくと従業員1人ひとりのメリットと相反する部分も出てきます。でもそこで反発が起こるのはもったいない。そうならないためには、まず経営者が事業の目指す姿とESGとの関連を示し、社内広報で広めていくことが大切です。そうして前提となるリテラシーや知識、理解を揃えてから施策を進めた方がスムーズだと思います

SHE株式会社 代表取締役CEO・CCO 福田恵里氏

組織が拡大した今、求められるのは経営者としてのリソース配分

創業7年目を迎えた今、SHEは約120人の従業員と約450人の業務委託スタッフを抱えるまでに成長しました。

組織が大きくなると、経営者の意思だけで物事を進めるのが難しくなり、スピードもこれまでのようにはいきません。とはいえ、同社では今も全員が一体感を持ち、同じ方向に突き進んでいます。

「ただ、この先事業の成長角度を上げていくためには、2段目のロケットが必要。そのために自分のリソースをどう使うかが経営者として重要なところだと思っています」。

福田氏がこう思うに至った背景には、創業後2度の産休・育休で事業から少し距離を置いた経験があります。後編では、そんな福田氏の女性創業者としての体験を掘り下げます。