Cat-tech企業RABOが語る、猫とESGの関係
2024.05.13 MPower Partners Team

2018年2月22日の猫の日に、かつてないスタートアップが誕生しました。猫の首輪型行動計測デバイス「Catlog®」、そして体重や排泄量・頻度を自動検知する置き型デバイス「Catlog_Board」を展開するRABOです。

そもそも猫に特化したテクノロジー自体が異例。AIを活用したソフトウェアだけでなく、ハードウェアでも質の高いものづくりが求められるうえ、マーケット自体を創っていく事業は、投資家から「経営難易度はSクラス」と評されたほどでした。しかしそれから6年が経った現在、RABOは猫に関するテクノロジーを持つ企業として唯一無二の地位を築き、2023年10月には海外進出まで果たしています。

そんなRABOにMPower Partners Fundが出資したのは2022年4月のこと。「それまでESGを意識しているわけではなかったものの、対峙しているマーケットや事業、会社の軸が結果的にはESGに沿っていた」と話すのは、創業者でCEOの伊豫愉芸子(いよゆきこ)氏です。

とはいえ、cat-tech(猫テック)とESGがどう関係するのかと疑問に思う人も多いでしょう。そこで今回はこれまでの同社の歩みから、「猫とESG」の関係をひも解いていきます。

「趣味の延長」という批判を一蹴する唯一無二のテクノロジー

創業して間もない頃は「猫好き趣味の延長」と言われることもあったという伊豫氏。そんな懐疑的な視線を一蹴できたのは、バイオロギングをベースにした高い技術力があったからでした。

バイオロギングとは、動物に小型のセンサーをつけることで「(人間から)見えない動物の時間」をデータとして可視化する研究手法です。ペットの行動を可視化するサービスはほかにもありますが、RABOの革新性は猫に特化した解析技術。実は従来のサービスは犬をメインとした「ペット」用だったり、可視化できる範囲が活動有無や移動経路だけだったりと、猫の全般的な生活行動を可視化できるものではありませんでした。

一方、RABOは行動生態計測分野の研究者や動物データサイエンティスト、獣医師の協力を得て猫の行動生態を知り尽くし、「水を飲んでいる」「ごはんを食べている」「おしっこをした」「うんちをした」「嘔吐した」などの行動を世界で初めて詳細に分類。さらに膨大なデータベースをもとにAIで体調不良の兆しを早期検知するほか、獣医療への接続を可能にするなど猫のウェルビーイングを大幅に高めたのです。

猫の飼い主にとってそれがいかに重要かは、Catlog®ユーザー(飼い主)の継続率の高さに表れています。今やRABOは約3万匹のユーザー(猫)を抱えるまでに成長し、蓄積データは150億件以上。猫の行動データベースとしては世界最大です。

ここまで事業を成長させることができた理由として、伊豫氏は「猫様を取り巻く状況を社会課題として捉え、Catlog®というプロダクトが数年後のスタンダードになると確信していたから」と話します。

「猫様と飼い主さんにとってなくてはならないものになるからこそ、一度始めたら止めてはいけないという覚悟を持ってこの事業を始めました。『かわいいペットのため』とかそういうことだけじゃないんです」

猫と人間のQOL向上は、持続可能な社会に貢献

RABOのミッションは、「世界中の猫と飼い主が、1秒でも長く一緒にいられるように 猫の生活をテクノロジーで見守る」こと。これがESGのS(社会)の領域に当たると知ったのは、MPowerからの資金調達がきっかけでした。

実は「猫のウェルビーイングを高める」という発想は、アニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方です。アニマルウェルフェアとは「動物が生きて死ぬ状態に関連した、動物の身体的及び心的状態をいう」と定義され、「不快からの自由」や「恐怖と苦の自由」などの実現によって改善できるとされています。これは、持続可能な社会の実現にとって欠かせない要素であり、ESG投資で重視される指標の1つです。

また猫のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が高まれば、当然家族である一緒に暮らす人間のウェルビーイングも向上します。愛する家族と幸せな時間を過ごす幸せは、相手が人間でも猫でも同じ。ところが「猫は家族の一員」という考え方がずいぶん浸透してきたにもかかわらず、そのウェルビーイング状態を知る方法はほとんどありませんでした。

RABOが提供するのはまさにこの手段であり、その先に目指すのは「大切な存在を大切に想い、そして大切にできる世界」というビジョンです。そしてそれを追求しているうちに、ESGを自然と実践できていたのです。

「すべては、猫様のために。」からSとEの取り組みが自然に発生

RABOで働く人々は全員が猫をはじめとする動物好きです。メンバーからは「猫様の役に立つのががんばる理由」「(RABOで働けて)めちゃくちゃ幸せ」などの声が上がるなど、事業の目的自体が高い従業員エンゲージメントにつながっています。また社内で6割にのぼる「猫飼い」メンバーにとっては、新機能をすぐに試せたりアドバイザーの獣医師に相談したりできる環境自体も大きな特典です。

さらにミッションに沿った福利厚生も整備。生後半年以内の猫を迎えた場合に最大1か月間のリモート勤務を可能としたり、猫の慶弔休暇を取れるようにしたりするなど、家族である猫を大切にしながら従業員が成果を出せる環境を整えました。こうした取り組みもESGのSを意識したわけではなく、猫と人間の幸せを考えて生まれたものだといいます。

E(環境)の領域では、「Catlog_Board」を梱包する段ボールを猫用ベッドとして、また緩衝材を爪砥ぎとして再利用できるようデザインしました。コスト観点では通常の梱包材の方が安いものの、「すべては、猫様のために。」という考えから生まれたこのアイデアは実際に使った猫様たちから大好評だそうです。

これらの取り組みも、あえてESGの枠組みを意識していたことではなく、社会課題解決のために進めてきたことだと伊豫氏は語ります。

「ESGはともすれば実践そのものが目的化してしまうケースもありますが、ESGの実践は本来意識してやるものではないのかもしれません。うわべだけのESGではここまで成長していなかったと思います」

Catlogの梱包材と緩衝材を再利用した猫用ベッドで猫がくつろぐ様子

Catlog_Boardの梱包材が猫用ベッドに。敷いてある爪とぎは緩衝材

膨大な猫データベースを強みに、世界中の猫の飼い主のインフラへ

2023年10月にはアメリカでの商品展開を開始し、英語版アプリもローンチしました。実は創業当初からすでにグローバル展開を視野に入れていたという伊豫氏。「猫の行動も飼い主の愛情も万国共通。日本のみに閉じる意味はないと思っていました」。

海外進出から約半年が経った現在はまだ手探りの段階ではあるものの、伊豫氏は「日本と比べて、飼い主さんの猫様に対する気持ちやCatlogの提供価値への反応に大きな違いはなさそう」と手応えを感じています。今後は訴求内容の精査や効果的なマーケティングチャネルの特定などに力を入れる予定です。

一方国内でも、今後サービスのリーチを広げCatlog®の価値をさらに伝えていくと話します。

「Catlog®のようなサービスはこれまでになかったこともあり、市場そのものを創りながら事業を運営する難しさは常に感じています。一方で一度使い始めるとサービスやプロダクトのファンになる方が大変多く、創業時に感じていた『猫様と飼い主さんにとってマストハブな事業である』という確信はますます深まりました。世界中の猫様たちの生活をアップデートできるのは、膨大なデータを持つRABOだけだと信じています」

そんなRABOが展開するCatlog®は今、猫の健康を保つという「マイナスをゼロにする」レベルにとどまらず、「ゼロをプラスにする」というQOLやLOVEの部分に踏み込みつつあります。その第1弾として2024年5月9日にリリースしたアップデートでは掃除の記録が可能になり、人間の世話による猫のQOL向上を可視化できるようになりました。

RABOでは今後も猫のQOLを「プラス」にするさまざまな機能を続々とリリースする予定です。なお、今回のアップデートの詳細はこちらからご覧いただけます。