テック業界をアップデートせよ:登壇イベントのマイノリティ比率を引き上げます!
2023.12.19 Trista Bridges

MPower Partners Fundを設立して以来、私たちはあらゆる面でダイバーシティとインクルージョンを推進すべく取り組んできました。特に力を入れているのは雇用慣行や投資アプローチにおけるDEIの確保ですが、ほかにもこのトピックが何より重要な分野があります。その1つが、テクノロジー業界におけるダイバーシティの推進です。私たちはこれまで、DEIに特化したイベントを開催したり、ブログやインタビューを通してソートリーダーシップを発揮したりと、さまざまな方法でテクノロジー業界のダイバーシティ推進に貢献してきました。

それだけでなく、他社が主催するスタートアップイベントにも積極的に登壇または参加してきました。その際、多様な背景を持つ登壇者が10%もいないイベントにはどんな形でも参加しないと決めています。指標を設定したのは、「測定できないものは変えられない」という信条からです。私たちはこの指標の改善に前向きなイベント主催者を支援したいと考えています。そして実際に、MPowerのネットワーク内で有力な登壇者候補となる女性やマイノリティの人々を、そうした主催者とつなげてきました。

しかし、10%が最終ゴールではありません。ESGへのコミットメントを常に適切かつ十分野心的なものとするには、継続的な評価と強化が必要です。そこで私たちは2024年1月より、この最低基準値を20%とすることにしました。そして数年後にはさらに引き上げられるよう努力します。心強いことに、私たちは孤軍奮闘するわけではありません。日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)は、主催するイベントにおいて女性登壇者の割合を20%以上とする方針をすでに打ち出しています。

スタートアップカンファレンスにおける登壇者の多様性の欠如は、ここ10年の間に重要な課題として浮上してきました。国際的に、イベント主催者に対して登壇者の多様性目標を設定するよう働きかける取り組みが始まったのです。また主催者が女性やこれまであまり取り上げられてこなかったグループからの登壇者を探すのをサポートする組織も登場しました。実際、この問題は2000年代初頭と比べると改善され、アメリカでは女性登壇者の割合がテクノロジー業界で働く女性の割合とほぼ同じになったこともわかっています(27% 対 24%)。もちろん業界で働く女性の数にまだまだ改善の余地はあるものの、これは心強い進歩です。加えて、多くのイベント主催者が、女性または多様性にフォーカスした団体や幅広い範囲の候補者に接触し、登壇者に多様なグループの人々が含まれるように努めています。

一方、この点に関して日本のスタートアップイベントは後れを取りがちです。とはいえ、注目すべき成功例もあります。なかでも最たるものは、おそらく日本で最も大規模かつ国際的なスタートアップイベントのIVSです。IVSの共同創業者である田中章雄氏は、年に1度のイベントでジェンダーをはじめとする多様性の強化に深くコミットしてきました。そして、その努力は実を結んでいます。10年前のIVSで女性登壇者はゼロでしたが、最新のイベントを振り返ると多様な背景を持つ登壇者の割合がまもなく20%に届きそうです。さらに会場に託児所を設置したほか、“No ハラスメント”宣言も策定。問題やハラスメントが発生した場合に参加者が報告できるよう、「SOSフォーム」を用意しました。田中氏は、今年のIVSで発足したWomen in Techの日本支部も積極的にサポートしています。

ここで、なぜ登壇者割合をそんなに重視するのかと疑問に感じる人もいるでしょう。それに答えると、まず女性はテクノロジー業界で中心的な役割を担っています。技術開発職だけでなくリーダーシップ職に就く女性の数は増えており、その人々が大きな場で発言の機会を得ることは重要です。次に、多様な存在の反映も大切です。スタートアップやその他のテックイベントは、私たちテックコミュニティの自身に対する見方、そして業界外の人々の私たちに対する見方を形作ります。こうしたイベントは、メディアだけでなく一般の人々にとって私たちのコミュニティを知る窓の1つです。今のテックコミュニティは幅広い人々が活躍し、体験やアイデア、背景の多様性が進んでいますが、世界が知るイメージがそれらを反映していることが重要なのです。

登壇者割合の改善をはじめとするDEIの取り組みにおいて、世界と日本のテクノロジーエコシステムが進化し続けているのを心強く思います。これらのトピックは、今後も拡大し続けるエコシステムを健全に保つ核です。私たちはこれからもこの取り組みに貢献するとともに、国内外の革新的かつインクルーシブなイベントに参加するのを楽しみにしています。

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